陸っぱりでは夏から楽しめるハゼだが、沖釣りでの本格シーズンとなるとやはり秋〜冬にかけてだ。そして沖釣りのハゼといったらここ、150年の歴史を誇る東京湾奥の老舗船宿、深川の冨士見。今年の模様はいかに?と9月末の週末に釣行した。
和竿で楽しむハゼ乗合
冨士見では毎年秋の彼岸の中日にちから乗合のハゼ釣りを開始する。受付を済ませ、船着き場で名物船長のマーちゃんこと斎藤正雄船長に今年の様子を聞くと「今年は荒い(大きい)のが多いんだよね。数は束20(120)くらい。例年だと2束くらいは釣るから今年は少ないかもね」と控えめな答え。
大きいのが多くて120尾も釣れるなら相当よさそうに感じるが、基本的に年魚といわれるハゼ(時に越冬個体もいる)がこの時期に大きい(育ちが早い)のは、数が少なくエサが豊富に食べられるからということで、これは夏場のアユなどでも同様なことが言われる。「まあそれでも遊ぶ分くらいは十分に釣れると思うよ」と8人の釣り人を乗せて出船した。
この日は2本竿を操る常連さんが2人、親子連れ、カップル、女性、そして私。ハゼ乗合らしい、ビギナーから腕達者のベテランまでの呉ご越えつ同どう舟しゅうだ。船は1時間ほど走って釣り場の木更津沖へ到着する。港内へ入り北側の岸壁際で釣りを開始。水深は2メートルちょっとの浅場だ。
1投目からさっそく「きた、きた!」と歓声が上がり、左舷胴の間の女性がこの時期のレギュラーサイズ、10センチくらいのハゼを釣り上げた。
これを機に船中ポツポツとハゼが上がり出す。ただまずまずのペースで釣り上げる常連さんに比べ、ハゼ釣りビギナーとおぼしき方がたは「あれ?いない」とか「アタるんだけどな」と10回のアタリで1回掛けられるかどうかと苦戦している。これがハゼ釣りの難しさであり面白さだ。
ひととおり写真を撮ったところで私も竿を出す。冨士見でのハゼ釣りは毎回貸し竿のお世話になっているのだが、今日は斎藤船長のマイロッドをお借りした。長さ三尺弱という中通し竿で、この日の水深だと糸をたぐることなく、ノベ竿感覚でハネ込みで取り込めるちょうどいい長さだ。
さすがに船長愛用の竿ということで使いやすいだけでなく感度もいい。ブルンとくるのは食い逃げアタリ、ブルブルブルンは掛かっちゃったアタリ、クッと竿先に出るモタレアタリで合わせたいのだが、これはなかなかうまくいかない。まあこれは腕の問題だからどうしようもない。
掛けてからの手応えも最高。良型ともなると底でなかなかの抵抗を見せて結構な引きを楽しめる。「ハゼ? 小物釣りでしょ」なんて人には、ぜひ専用竿でハゼを釣っていただきたいと強く思う次第だ。
この場所では飽きない程度に釣れ続いた。入れ食いとはいかないものの、バタバタッと連釣する場面もあって足元のオケはけっこう賑わってきた。型は7〜8センチの小型から13〜14センチの良型まで。
レギュラーサイズは10センチ前後といったところだ。そうこうしていると「なんだこれ〜!」と声が上がり、お父さんときていた内田智也君(小6)がタイワンガザミを取り込んだ。雄ガニでアオガニと呼ぶ地域もある鮮やかなブルーが印象的なカニ。味噌汁にするとおいしいよと教えると、大切にクーラーに仕舞い込んでいた。
アオイソメのタラシは短めに
エサのアオイソメはチョン掛けでタラシは2センチほどにする。「ハゼのエサは長過ぎるとダメ」と船長。エサの先っぽばかりかじられてアタリは出るけどなかなかハリ掛かりさせられないからだ。ただ長いのはダメだけどボリュームがあるのはOK。というかボリュームはあったほうがいい。アオイソメを通し刺しにして太いアオイソメなら2本、細いものなら3本付けくらいがおすすめ。アタリが遠いときなどはとくに有効で、1匹チョン掛けに比べて断然アタリが多くなるのでお試しを。
ハゼの引きがたまらない
11時を過ぎてこの日初めての場所移動。同じ港内だが南側の岸壁寄りに移動した。ここは先ほどの場所よりもやや浅くちょうど2メートルくらいの水深だ。ここでもすぐにアタリが出るが、なかなかハリ掛かりしない。ハゼじゃないのかな?と釣り続け、ようやくハリ掛かりして上がってきたのはクサフグの赤ちゃん。その後もチンチン(クロダイの幼魚)、ヒイラギとゲストも多かったが、そのうちにハゼも食い出してきた。そしてこれがデカイ!
釣れるのは大抵12センチ超、それどころか15センチ級も連発、なかにはヒネハゼと呼ばれる16〜17センチの大型もいる。このクラスになるとハゼ込めるちょうどいい長さだ。
さすがに船長愛用の竿ということで使いやすいだけでなく感度もいい。ブルンとくるのは食い逃げアタリ、ブルブルブルンは掛かっちゃったアタリ、クッと竿先に出るモタレアタリで合わせたいのだが、これはなかなかうまくいかない。まあこれは腕の問題だからどうしようもない。
掛けてからの手応えも最高。良型ともなると底でなかなか専用竿はキューンと大きくしなり「小物釣りとは言わせない!」とばかりの強い引きを感じさせる。しかも潮時もよくなってきたのか入れ食いに近い食いっぷりだ。
私は竿を置きカメラを持って船内を回っていたのだが、「もう写真はいいでしょう。今釣らなきゃあ」と船長からハッパをかけられ再び参戦。大型ハゼ連発で楽しませてもらった。
この後も食いっぷりは衰えないままに「今日は出るのが少し遅くなったから」と15分ほど延長して、13時45分に沖揚がりとなった。
釣果は25 〜128尾。竿頭は左舷ミヨシの小林さんで、左舷斎藤 正雄船長ミヨシ2番の馬場さんがちょうど100尾と続いた。
船長いうところの「今年は魚が荒い(大きい)」は十分に実感、「数は少ないかも」は個人的には問題なく楽しめるレベルだと思う。実際翌日の釣果は船長が目安とする2束を超えたし、控えめな船長の読みは外れるシーズンとなりそうな予感だ。
いずれにせよハゼの沖釣りはこれからが本番。冨士見では運河筋を狙う半日船や仕立てになるが天ぷら船など、より初心者でも楽しめるハゼ釣りメニューが用意されている。ベテランはベテランなりにビギナーはビギナーなりに楽しめるハゼ釣り。江戸前の伝統の釣りをぜひ体感してほしい。
◀︎ 当日の仕掛け
ハゼ釣りの仕掛けはとてもシンプルで貸し竿使用なら持参するのは糸付きのハリ(袖5~6号で受付でも購入可)だけだ。竿はキス竿などでもいいが「ハゼは船下で小づいて釣るもの」というポリシーから冨士見では投げ釣りは禁止なのでリールが重いだけ。釣果的にも釣趣的にも貸し竿(道糸、オモリ付きで500円)が断然おすすめだ。
船宿infomation
冨士見
▶︎料金=ハゼ乗合一人9500円(エサ、氷付き)
▶︎備考=予約乗合、7時集合。別船はライトアジ、タチウオへも出船