アタるんだけど、あれっ?
掛からない。そんな釣りはフラストレーションが溜まるもの。けれど、掛けられたときのうれしさといったら、そりゃもううれしいのなんの。極上の達成感に浸れちゃう。だからですよ、タチウオ釣りがとっても面白いのは!
というわけで、今回は内房富津の鹿島丸へ出かけてみた。
いよいよ本命ポイントへ
この秋の天候は10月中旬を過ぎても不安定。私が出かけた10月30日は久びさの好天予報だった。
午前5時、鹿島丸の乗船場に着くと、そこにはたくさんのクーラーが並べられていた。集合時刻は6時だが、1時間以上も前から多くのファンが集まっていたのは、穏やかな日を心待ちにしていた表れだろう。
出船は6時半。私の座った右舷は7名、左舷は6名。北からの風が残るものの、久しぶりの青空を眺めながら鹿島丸は西へ向かう。「15分ほど走ります。注意事項をお知らせしますと、まずは道糸はPE1.5号、ハリスの長さは2メートル、もしくは2.5メートルにしてください。ハリは1本でお願いします」
いつもどおり、釣らせることにかけては人一倍熱心な鹿島孝夫船長のアナウンスを聞きながら、やがて着いた先は第二海堡の南だった。「ちょっと回ってみますが、合図があったらすぐ投入できるように準備しておいてください」
最初のポイントはここになりそう。「やってみましょう。水深は45メートル。タナは30〜40メートルです」
そのアナウンスがあると船上からは一斉に仕掛けが投入される。私はミヨシでカメラを構えていると、なんと待つことなく左舷大ドモ氏がリールを巻き始めた。
取り込んだのは小ぶりながらも本命のタチウオ。すぐさまシャッターを押させていただくと、次は左舷ミヨシ2番。「アタったタナは35メートルです」
こちらは1メートルオーバーのまずまずサイズだった。
この後は左ミヨシ、右2番と続き、7時25分までに7本の釣果。まずまずの釣れ具合かと思いきや、船長いわく、「うーん、簡単ではなさそうですね」との返事だった。
次は少し移動して本船航路で15分ほど。こちらは船中1本を追加したにとどまった。「では移動します。10分ほど走ります」
船は本船航路から西に向かう。そして、少しすると船団が見え、やがて鹿島丸もその中に入っていく。
「はい、やってみてください。水深は62メートル。タナは50〜60メートルを探ってください」
今度の場所は大津沖。15隻以上の船が集まっているところから察すれば、目下の本命ポイントであるに違いない。
時計を見れば8時4分。はてさて、こちらのポイントでは、どんな展開になるのだろうか……。
すると、真っ先に釣ったのは左舷ミヨシ氏。続いて左舷大ドモ、右舷胴の間氏と続く。
全体の釣れ具合としては、だれかが釣って私が駆けつけ、写真を撮り終えたら次の人にヒットするような感じ。決してバタバタ釣れるというわけではないが、魚群は確かにいる様子。船上からは「アタるけれど釣れない」との言葉も聞こえ始めた。
テンビンタチウオの基本攻略
鹿島船長によると、これから水温が下がるにつれ、タチウオ釣りはシビアになっていくとのこと。そこで、慣れない人に向けて、最も基本的な攻略法を聞いてみた。
「よく、市販の仕掛けで色いろな細工を施したものを持ってくる人がいるんですが、ビギナーこそ最もシンプルな仕掛けを使い、誘い方の習得から始めてほしいです」基本的な誘い方はワンピッチ、ワンジャーク。そして、食いが渋い日は15 センチくらいずつ誘い上げる。
「その日に合った誘い方はその都度違いますが、この基本線をベースに、ステイの時間や巻く幅を変えるなどしていくといいでしょう」
ウデのなさを痛感
このポイントでの4本目は右舷ミヨシ氏、次は左舷トモ2番。続けては左舷2番。釣れたタナを聞いてみたところ、いずれも58、もしくは59メートル。状況としてはあまり高いタナまでは追ってこないようだ。「釣れない人はていねいにタナを探ってみてください。それと、長い時間仕掛けを入れっ放しにせず、途中でエサのチェックもしてみて」
船長のアナウンスに従ってさっそく仕掛けを上げた人。こちらは半分エサがない。「いつ取られたんでしょうか」
続いて釣れたのは左舷ミヨシ、そして隣の2番で、こちら2人は常連さん。さすが通い慣れただけあって、渋い状況下でもヒットを続けた。
時刻は9時50分。船中はポツポツ釣れ続け、左舷ミヨシ氏はツ抜けし、そして全員が型を見た様子。それを確認したところで私も仕掛けを投入してみる。すると……うーん、やっぱり難しい。
自分なりのていねいさでタナを探っていくがアタリは感じられない。そこで、エサを確認しようとリールを巻くと、その途端にガツン。
手にしたのは1メートル級のタチウオだったが、いつ食ったのだろうかと、どうにも合点がいかない。
次にヒットしたのは細かく巻き上げても反応なしだったので、シェイクして止めたらいきなり竿先が突っ込んだ。これも最初の小さなアタリは分からなかった。
その後も30 〜40分おきにヒットし、午後1時の沖揚がりまでになんとか5本をゲットしたものの、最初にアタリを感じつつ、食い込ませていくプロセスを楽しむには至らず、つくづく自分のウデのなさを感じてしまった。
この日のトップは左舷ミヨシ氏の19本。サイズのほうも116センチでトップ。次頭13本、3番手11本で、10本が2名、スソ3本。全体的なサイズは1メートル以下と以上が半々の割合といったところ。「この時期になると難しくはなるけれど、面白くもなる。シャクリなど、釣り方もその都度変わるし、奥が深い分、ハマる人も多いんですよ」
こちらは帰りがけに聞いた鹿島船長の言葉。確かに面白い釣りだけに、納得いく結果を出すべく再チャレンジしてみたい。
◀︎ 当日の仕掛け
本文にあるとおり、鹿島丸では道糸はPE 1 . 5 号、ハリス長は2もしくは2 . 5 メートルに統一されている。また、通常のオモリは6 0 号だが、浅場を狙うことがあるので40号も忘れずに。船宿仕掛けはハリは2 / 0 号。ハリスはハリ側ナイロン1 2 号、その上は5号の逆テーパー。もちろん同じ太さのハリスを使用してもいいが、その場合には8~14 号がおすすめ。なお、ハリスにワイヤー類を使うのはトラブル防止の意味で避けたい。
船宿infomation
鹿島丸
▶︎料金=タチウオ乗合一人1万円(エサ、氷付き)
▶︎備考=予約乗合、6時受付開始。毎月第3金曜日定休