アジは東京湾を代表する人気ターゲット。栄養豊富な東京湾に居着いた個体はたっぷりと脂質を蓄えていて、とりわけ冬〜春先の低水温期に越冬するアジは腹身の脂が増して絶品の味を堪能できる。
底に張り付くアジ
今回お世話になったのは東京湾奥小柴のはやぶさ丸。通年アジを狙い、数多くのポイントを知りつくす。
釣法は130号のアンドンビシを用いるスタンダードなビシ釣り。ライトアジ船が多くなったこのエリアにしては少し珍しいが、そこには確固たる理由があった。「状況によって狙うポイントを変えますが、潮流の関係でライトでは釣りにならない所もある。協定のエリア制限もありますし、130号のほうが選択肢が広がるんです」 なるほどアジにこだわる小山恭弘船長らしい。
釣行日は季節外れの雪が舞う予報も出ていた3月8日の土曜日。7時出船に余裕をもって6時前に小柴に到着すると、寒さをものともしない熱いアジフリーク5名がすでに船上で準備中だ。

一緒に竿を出すことになったおかみさんを入れて計8名を乗せて、7時前に出船。ここ1週間はシケで出船できなかったので、状況を探るべくまずは定番の観音崎沖へ走る。
すでに何隻かアジ船がいたが、小山船長は少し離れた水深65メートル付近で反応を探す。ほどなくアジと思しき反応を見つけて、いざ実釣だ。
開始後しばらくは目立った動きがない。反応はあるもののコマセが効くまで数十分は辛抱タイムというのはビシアジあるあるなのだが、ゆっくりとした電動リールの巻き上げ音に反応して席に向かうと、上がってきたのは小ムツやカサゴだった。
厳しめのスタートながら、そんな中でもおかみさんと左舷トモの常連・佐久間さんはコンスタントにアタリを拾う。
最初のアジは佐久間さん。30センチほどのいいサイズだ。おかみさんも1投1尾で数をのばしている。
1時間がたったころ佐久間さんのロッドに異変、明らかにアジより強い引きがきた。2号ハリスが切られぬよう慎重にヤリトリして上がってきたのは、掛かったアジに食いついたヒラメ。目測2キロを超える良型だったがタモ取りでひと暴れしてジ・エンド。あまりにも残念だ。
船長の指示するタナは底から2メートル。くだんの2人は底付近に集中してコマセをまいている。アタリがない方はコマセをまく位置とタナ取りが少し上なのだろうか?
確認も含めて9時半ごろ竿を出してみると、潮も適度に流れていて悪くない。着底後、糸フケを取って1メートル巻いてまず11回、そして50センチ刻みで2回。計3回コマセをまいて底から2メートルちょうどで待つ。
するとすぐに、ひったくるようなアジの明確なアタリ。苦戦している状況を見ていただけに少し拍子抜けしたが、無事に1尾を上げた。魚はいるが活性が低く、底付近に張り付いているようだ。
2投目も底中心にコマセをまくとヒット。3投目はアタリがなかったので、コマセダイの要領でタナから少しずつ糸を出して落とし込んでみると50センチほど落としたところでアタリ。活性がないアジの鼻先へエサを持っていく作戦が奏功した。


チャンスタイムこそ基本を再確認
アジは食いが立つと船中至る所でヤリトリ中なんてことも珍しくない。そんな中で周りよりも明らかにアタリの数が少なかったら、基本的なことを再確認(タナの間違いなどは除いて……)しよう。よくあるのが仕掛けをまったく交換していないケースで、ハリスにヨレがあると食いが一気に落ちる。色が落ちてきたアカタンの付け替えもお忘れなく。
仮説を実践するおもしろさ
この要領で開始から5投で5尾キャッチ。3本バリの先バリに掛かることが多かったことを踏まえ、ここで少し欲を出して一荷を狙ってみる。
まずは底から2メートルで1尾目のアジが掛かった。たぶん先バリだろう。続いて50センチほど仕掛けを下げてまた待つ。一段と引きが強くなったところで電動リールのスイッチをオン。
そして目論見どおり一荷に成功。厳しい中の7尾連続で少し勘違いしそうだったが、周りを見渡すとたまたま時合と自分が竿を出すタイミングが重なったらしい。
皆さんポツポツとアジの顔を見て、全員のバケツにしっかりアジが泳いでいる。確実に状況は上向き1時間ほどアタリが続いた後、潮が変わったのか再びアタリが遠のいた。
ここで船長は移動を決断し、浦賀方面へ。今度は水深45メートル、タナは同じく底から2メートルの指示だ。

アタリはさほど多くないものの、ここはどういうわけか30センチクラスの良型が多い。
きっと小型もいるのだろうが食い気がなく、良型のアジだけがエサを見極めながらたま〜に口を使うのでは……という仮説を立て、まくコマセを少なめにし、待ち時間を長めに取る作戦に変更。
これが正解だったのかペースこそ落ちたものの良型のアジでバケツが埋まっていく。この仮説、まんざらでもない?
1時間もするとまた活性が上がってきて、13時の納竿までの1時間は大中小のアジが入り交じってのピークタイム。指示ダナに仕掛けを馴染ませると間髪入れずにアタリ到来、前半苦戦していた右舷ミヨシの佐藤さんもパターンを完全につかんでペースアップ、一荷も達成する好調ぶりだ。
圧巻は右舷トモの鶴谷さん。前半から良型主体に数釣れていた印象ながらも途中で釣果を聞くと「いや、まだ30尾ぐらいですよ。いいサイズは出てるんだけど一荷がないんだよねー」などとぼやいていたが、なんと最後の3投で2、2、3尾の計7尾。船中唯一のトリプルも達成して42尾のトップで納竿を果たす。
佐藤さんと佐久間さんが40尾で続き、終わってみれば全員満足の良日となった。
家に帰ってアジをさばくと、船長の言葉どおりたっぷりの脂。通年楽しめる東京湾のアジだが、水温がまだ低いこの時期限定のアジの味を堪能してもらいたい。


◀︎ 当日の仕掛け
ビシアジ用のロッドは長さ1.5~2.4メートルの汎用タイプでOK。オススメをあえて言うなら胴調子で少し軟かめ。アジは口が弱いので、巻き上げ途中のバレ防止にもなる。引きが明確な魚なので、胴調子でも問題なくアタリが分かるはずだ。
船宿infomation
はやぶさ丸
▶︎料金=ショートアジ乗合 一人9500円(エサ、コマセ、氷付き)、アオイソメは別売400円
▶︎備考=予約乗合、7時出船


