さほど大きくもない魚なのに小気味いい引き味で釣り人の心をくすぐるメバル。春を告げる魚としても知られ、古くからのファンも多い。
釣り方は生きたモエビをエサとする通称エビメバルやルアー釣りなどもあるが、今回は新安浦のこうゆう丸で魚皮サビキを使った通称サビキメバルにチャレンジした。
狙い目は宙に浮く反応
暖かくなったり寒くなったり不安定な陽気が続く中、3月10日は好天予報。朝方まで残る北風も次第に収まるようだ。こうゆう丸のスポット・メバル船に集まったのは5名。右舷は私を含む3名、左舷に2名。荻野裕司船長によるありがたい釣り方レクチャーの後、7時20分に出船した。
約15分で猿島の東側に入り反応を探した後、「やってみましょう。水深は30メートル。すぐに25メートルと浅くなるので根掛かりに気をつけて」の合図とともに皆さん手早く仕掛けを投入。
すると3分もたたないうちに左舷ミヨシの佐々木さんにヒットした。8本バリ仕掛けの下から2番目に掛かっていたのは18センチほどのメバル。まずは幸先のいいスタートだ。

荻野船長によれば今年3月にショート・サバキメバルのスポット船を始め、今日が3回目とか。前2回はまずまず釣れたそうで、猿島周りに点在する小さな根にメバルが着いているらしい。「前回、釣り上げたメバルを入れたオケを見たらアミ類が吐き出されてましてね。今日も魚探を見て、エサが豊富な場所を狙っていきますよ」小移動して次のポイントへ。ここでもポツポツ釣れて全員が本命を手にできた。「まだ反応が薄いかな。アミ類の反応が濃いとメバルも食いが立って底から浮き上がり、タナも上下に幅が出ます」9時を過ぎると風がやや収まり波も穏やかに。魚探を見ると底付近から上に5〜6メートルの幅で反応がある。「かなり浮いてるいい反応。5メートル上まで探ってみて」船長の読みどおり、右舷胴の間・橋本さんの竿が大きくしなった。リールを巻く姿はいかにも重量感たっぷりだ。
仕掛けが上がってくると上2本のハリに掛かっているのが確認でき、順に取り込んでいくと3、4、5と続く。うれしい5点掛けだ。「船長のアナウンスで底から少しずつ巻き上げていったら、けっこう上のタナでアタりましたよ」と橋本さん。
皆さんここで数をのばし、トップは15尾ほどに。型もよくなって20センチ級が交じるようになった。このヤマ場は1時間ほど継続し、10時前に移動となった。
次は猿島の北側、水深35メートル。ここから私も仕掛けを下ろしてみる。オモリは30号で仕掛けは船宿推薦の6本バリのサバ皮サビキ。全長は3メートル弱と長く、私が持ち込んだ2.4メートルの竿では少し余ってしまう。
そこで出船前に船長から教わった絡み防止の対策を講じる。まずは竿を置き、オモリを持って風下側に1メートルほど移動。こうすれば竿に対して仕掛けが斜めに張るので仕掛けが絡まない。
そして合図があったらオモリを海中に落とし、リールのクラッチを切る。ここまではわれながら万全だったが、この流しはメバルの魚信はなく15分ほどで移動となった。


荻野 裕司船長に聞く 釣り方の要点
「サビキ仕掛けのメバル釣りのコツは、仕掛けをゆっくりと動かして誘うことです。枝スを海中で横になびかせることが肝心で、枝スがタテや斜めにならないイメージで竿先を上下させてください。
タナは底中心ですが、底から5~6メートル上まで浮くこともあります。アナウンスをよく聞いておいてください。
多点掛けもサビキメバルのだいご味です。最初の魚が上のハリを食ったときがチャンスで、メバルが底に戻ろうとして仕掛けが不規則に動くことで下方のハリにヒットする確率が増加します。竿先を送り込みながら追い食いさせ、重い手応えを感じたところで巻き上げてください。派手に力強く引いたら、上バリに食った証拠。大きなアタリがあったときこそ多点掛けのチャンスです」
良型ポイントも食い上向き
猿島の北西へ5分ほど走り、水深35メートルで再開すると右舷ミヨシの五十嵐さんがいきなりのダブル。この日がメバル釣りデビューの左舷胴の間・石川さんも20センチ級を取り込んだ。
風はほぼ止んで海面も穏やかだ。昔から「メバルはナギを釣れ」と言われるだけにこれからがチャンスと期待していると、ついに私の竿がたたかれた。反射的に竿を少し送って追い食いを狙う。10秒ほど待って巻き上げてみると、20センチ級のメバルの2尾掛け。と、すぐに船長から「向こうで3点掛けだよ」と知らせが入り、左舷ミヨシの佐々木さんが満面の笑顔を見せる。うち1尾は23センチの良型だ。船長いわく、「前回はこのポイントで釣れなかったけど、今日はいるね。ここは型もいいんですよ」今日の取材はツキにも恵まれてるぞと、撮影を済ませて釣り再開。
竿が短いのでアタリを弾かないよう、力を抜いて竿を手にする。待っているとほぼ水平に構えていた竿先が海面下まで持っていかれた。巻き上げると20センチ級の2点掛け。ここでは仕掛けを入れる度にアタリがあり約1時間で9尾をキャッチできた。
その後も猿島周辺を転々とし、ポツポツと数をのばしながら13時半に沖揚がり。トップは38尾の橋本さんで、ほか35尾、33尾と続いて私は12尾。型も18〜23センチといい感じで一日を終えた。

それにしても小柄な魚なのになんて気持ちのいい突っ込みだろう。また、お手軽なサビキ釣りでありながら食いダナを探し当てたり、多点掛けを狙っても思いどおりにいかなかったりと、奥深い一面があるのもおもしろい。
こうゆう丸では仕立船などが入ったとき以外は優先してスポット・メバル船を出すそうで、期間は6月いっぱいまで。シーズンが短いだけに早めに出かけてほしい。

◀︎ 当日の仕掛け
竿はオモリ30号が背負える3~3.6メートルの軟らかい胴調子。仕掛け絡み防止の面ではインナーロッドもおすすめだ。小型両軸リールに巻く道糸はPE1.5~2号が標準的。サビキ仕掛けは船宿推薦の魚皮バケ6本バリを使うのが間違いなし。
船宿infomation
こうゆう丸
▶︎料金=ショートサビキメバル乗合 8500円
▶︎備考=スポット出船、予約乗合。7時15分出船。ショートアジ、ショートタチウオへも






